あなたの経営は、”経営”になっていますか?
「経営=売上を上げること」だと思っていませんか?
一度、立ち止まって問いかけてみてください。
「自分のやっていることは、果たして“経営”と呼べるのだろうか?」
目の前の売上ばかりに意識を取られ、現場の悲鳴には耳をふさぎ、今月の数字を追いかける。
それが、経営者としての本来の仕事なのでしょうか?
結論から言えば、経営とは「資源を再配分すること」。
売上をつくることは、その中の一部に過ぎないのです。
売上を上げればすべてうまくいく
――その幻想が組織を壊していく
「売上さえ伸ばせば黒字になる」
そう信じて、営業を強化し、広告を打ち、キャンペーンを連発する。
しかし、それだけで会社が良くなることは、ほとんどありません。
売上は、経営がうまくいっている“兆候のひとつ”にすぎません。
売上=成果だと思い込んでしまうと、数字の先にある問題が見えなくなってしまうのです。
経営の本質は「選び、集中する」こと
「できることを全部やる」のは、経営ではありません。
むしろ、何をやるかよりも、何をやらないかを選ぶことこそが、経営の真価。
限られた人材・お金・時間――
そのすべてを、“目的”に沿ってどこにどう集中させるか。
これができて初めて、「経営している」と言えるのではないでしょうか。
経営の失敗例1:売上は伸びた。でも会社は壊れた
――「営業強化=正解」と思い込んだ製造業の末路
「売れば売るだけ利益になる」
そう考えた町工場の社長は、営業人員を倍にし、販路を一気に広げました。
実際、半年後には売上が過去最高を記録しましたが――
その裏で何が起きていたかというと…
- 生産能力を超えた受注で、現場は疲弊
- 品質トラブルや納期遅延でクレーム続出
- 長年の取引先との関係も悪化
決算を迎える頃には、まさかの赤字。
売上は増えているのに、利益が消えていく。
そのとき初めて、社長は“違和感”に気づいたそうです。
なぜ失敗したのか?
原因は、“営業”という一点にばかり資源を投下し、全体最適という視点を失っていたから。
「売ること」に集中しすぎて、「つくること」「届けること」が犠牲になっていたのです。
どうすべきだったか?
まず考えるべきは、「自社の今の資源で、何を実現すべきか」。
そして、売上に比例して必要になる体制――人・時間・オペレーション――それを先に整えるべきだったのではないでしょうか。
経営の失敗例2:店舗数は増えた。でも人がいなくなった
――「売上ランキング制度」がもたらした崩壊
「競争がないと現場は伸びない」
そう信じて、店舗ごとの売上成績をランキング化し、表彰と賞金制度を導入した飲食チェーン。
初めは盛り上がったものの、1年後には…主力の店長が7割も辞めてしまったのです。
なぜそんなことになったのか?
- 数字ばかりを追う文化が、現場の士気を奪っていった
- 人手不足でも人員補充は後回し
- 長時間労働が常態化し、精神的な疲弊が限界に
“売上が上がるなら、多少は仕方ない”という空気が蔓延し、気づいたときには“人”がいなくなっていたのです。
どうすべきだったか?
本来、売上を支えているのは“人”です。
人のエネルギーが発揮されるためには、「適正な評価」や「働きやすさ」も欠かせません。
数字だけで評価するのではなく、“組織の状態”にも目を向ける必要があったのではないでしょうか。
経営の失敗例3:「新規事業=成長」と思い込んだIT企業
――全部やろうとして、全部失った
「競合に追いつかれる前に、新しいことを始めなきゃ」
焦りから、3つの新規事業を一気に立ち上げたIT企業。
しかし結果は、すべて中途半端なまま終了。既存の主力事業の売上まで落ち込む事態に。
なぜうまくいかなかったのか?
- 各部署が分断し、社内の連携が取れない
- ノウハウも人材も分散し、誰も全体を見れない
- どの事業にも“熱量”が足りない
結局、3つの事業のどれも軌道に乗らず、社内には疲弊感と混乱だけが残ってしまいました。
どうすべきだったか?
「何かやる」ことよりも、「何に集中すべきか」を決めることが、経営者の役割です。
新規事業をやるなら、既存事業とどう両立するのか。何を止め、誰を任せるのか。
こうした“資源の再設計”が不可欠だったのではないでしょうか。
経営の失敗は「判断ミス」ではない。「構造の欠落」から始まっている
これら3つの失敗に共通しているのは、資源の配分が目的とズレていたという点です。
どれも一見、正しそうな判断に見えます。
「営業を強化する」「売上で評価する」「新規事業に挑戦する」――
けれど、その背後に目的がなく、設計がなければ、経営は崩れます。
あなたの会社は、資源を“意図して”配分できているでしょうか?
ただ流れのままに、人やお金を動かしていないでしょうか?
経営とは、「今あるすべてのリソースを、誰のために、何に使うか」を決める技術です。
迷ったときこそ、「目的」と「再配分」に立ち戻ってみてください。
そこにしか、本質的な経営の“答え”はないはずです。